第一回 医療法人とは
2018年8月26日
こんにちは。医療法人担当の吉田真美です。
8月末は東京都の新規医療法人申請期間ということもあり、あと数日で提出しなければならない書類の作成に追われ、てんてこ舞いです。
個人として開業されて1~2年経たれ、経営が安定してこられると、頭をよぎるのが「医療法人化したらどうなるんだろう?」という点かと思います。
本日は、医療法人とは一体なんぞや、というところをお伝えしたいと思います。
医療法人は、都道府県知事の認可を受けて初めて設立することができる法人です。
認可を受けるにあたっては、都道府県ごとに年に2~3回定めている日程に基づき、都道府県指定の書類をすべてもれなく提出する必要があります。
多くは指定フォームがあり、指示されたとおりに内容を埋めていけばよいので、事務に長けた先生や事務長さんがいらっしゃれば、ご対応も可能かもしれません。設立手続きについては、次回具体的にご案内しますので、今回は「医療法人はどういうものなのか?」を簡単にお伝えします。
まず大前提として、何をするにも定款に左右されます。以下に診療所移転を例にして、ご説明させていただきます。
これまでは、
- 旧診療所の廃止届
- 新診療所の開設届
- それに伴う厚生局の手続き
を行えばよかったのですが、医療法人化されると、
- 移転したいという意思を都道府県に申告し(定款変更申請を素案提出)
- 1~2か月かけて書類補正→本申請
- 定款変更認可書受領(都道府県知事)
- 登記等変更
- 診療所開設許可申請(保健所)
- 1~2週間かけて開設許可書受領
- 旧院廃止届
- 新院開設届
- 上記に伴う厚生局の手続き
と、格段に踏まなければならない手続きの数が増えてきます。太字にした手続きが、個人院時代には発生しない段取りですね。
また法人化されるとその運営が永続性を持ち、かつ非営利でありながらもゆとりを持った運営を行っていなければならないという前提の下での申請になりますので、予算立ても大変重要なポイントになってきます。
おおむね、最初に都道府県に対して移転に関する定款変更申請の素案を提出してから、すべてのお手続きが完了するまでには、3か月程度かかることをご覚悟ください。(ご事情、状況等によってはこの期間はご相談できる場合もあります。)
法人内の資金運用については、これまで理事長先生個人の年初の確定申告だけで済んでいましたが、医療法人化されると一般の企業同様、年に一度の決算を経て折々財産額を確定させていくことになります。この数字は、決算終了後に事業報告として都道府県に届出をする必要があります。
また、役員が自宅を引越しした場合でも、都道府県に対して役員住所変更届を提出する必要があります。
ほかには都道府県への届は必要ないものの、理事長先生をはじめとする役員の方々の報酬設定や社員(医療法人における社員は、一般企業でいうところの株主相当です。)の変更等、法人の構成や出費にかかわる変更は、すべて社員総会の議決を経たうえで決定されなければなりません。
上記は手続きの一例ですが、このように何をするにも「お上(都道府県)にお伺いを立て、認可を受けてから動く」というのが医療法人になります。ここまで読むと、「とても面倒だ!」と思われた先生がほとんどではないかと思います(笑)。
しかしながら、上記の前提さえ守っていれば、税制面や診療所の拡張(分院の設立等)、事業の拡大(附帯事業の展開等)において、個人診療時代より自由度が格段に高まり、患者様の利便性が高まるのも事実です。
「法人で決定していることをうっかり先にやっちゃった」という事態が後日発覚しますと、修正に大量の理由書、宣誓書、上申書や弁明書等を提出する必要が出てまいりますので、この点だけ慎重にして頂けば大丈夫です。
医療法人設立後の行政手続きは思いのほかたくさんあるのですが、そのあたりをきちんと理解している医師及び歯科医師の先生、士業の先生等は意外と少ないというのが、私の経験則です。少々扱いが面倒な法人ではありますが、設立、そしてその後の定期的なメンテナンスも含め、医療行政に通じた行政書士を顧問として抱えられることを、お勧めいたします。
吉田 真美